「ほっ」と。キャンペーン

カッコイイ右手

「寒くなりましたなぁ・・・」
隣で信号待ちしていた彼の唇がそう動いた気がして、
あわてて微笑みを作りながらエエと言い、iPodのイヤホンを外した。
「昨日はあったかかったのにねぇ。」と彼。
「今日は昼から雪になるみたいですね。」そう答えながら、iPodの電源を切る。
目的地は、この信号を渡ってすぐの書店だし、ま、いっか。

「海まで行かれますか?」
ニット帽の下の目じりに明るいシワを寄せて、彼は私に尋ねた。
「イエ、そこの本屋です。」
「そうですか。ま、本屋は立ってますからなぁ・・・」
ちょっと意味不明な応答に反応を控えながら軽く笑うと、
「僕は、海まで行くんですよ。」
確かに、本屋の先の松林を抜けると砂浜だ。
さっきから、足を上げたり、ぐるぐる腕を回したりして落ち着かないのは、そういうわけか。
「走って行かれるんですか??ジョギング??」
わざと腕を振って走るマネをして聞いてみた。
目じりのシワを更に深くしてははは、と笑いながら彼は答える。
「イヤ、歩きですよ。さすがにこの年で頑丈はできませんわ。」

実は、ここに来るまでの路地で、3メートルほど前に彼が現れたときから気になってはいた。
青いウィンドブレーカー、足首のところで絞ったナイロンのパンツ、
高そうなジョギングシューズに、グレーと黒のツートンのスポーツ用グローブ。
ジーンズを履いた私と違って、いかにも「走っちゃうよ」風ないでたち。
信号が変わった。

「僕はね、いつも海まで行くんですよ。」
「毎日ですか?」
「イヤ、あまり雨が降って寒い日とかはね・・・。昨日はぽかぽかでよかったなぁ。」
(よほど昨日のお天気が恋しいらしい)
「まぁ、無理してもいけませんもんね。」
「うん、そう。・・・ちょっと遊ぼうと計画してるんでね。体を鍛えておかないと。」
書店の駐車場の縁石をまたぐと、彼はちょっと歩みを速めた。

このまま彼に着いて海まで歩いたら、
その"計画"とやらを聞き出すことが出来るんだろうか。
ゴルフ??いやいや、毎日歩いて鍛えてるくらいだから、もっと激しく山登り??
私の好奇心は、危うく彼の青い背中を追っかけそうになったが、ひと言、
「じゃ、お気をつけて。」とだけ声をかけた。
背中のまま彼は、ツートンカラーの右手をニット帽の横で振った。

その右手が、なんだかとってもカッコよかった。


《週3時間以上の運動習慣は、寿命を10年近く延ばす》
イギリスのキングズカレッジのチームが行った研究。
運動習慣についての質問紙と、白血球のテロメアを調べたところ、
週3時間以上の運動習慣がある人は、週16分程度しか運動しない人に比べて、
テロメアの長さ・・・つまり"寿命"が10年分長かったという結果が出た。
運動することでストレス解消にもなるんじゃないか、という分析も。
1日に換算すると約30分ですか。
頑張って動きましょう~(笑)

[PR]
by nasuka99 | 2008-02-12 15:25 | essay