子育ての大誤解

まだ読んでる最中なんですが・・・
面白い本なのでご紹介。

子育ての大誤解―子どもの性格を決定するものは何か(ジュディス・リッチ ハリス 著, 石田 理恵 訳)
早川書房 2,625円

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タイトルからして刺激的な本ですが(^_^;)
「親が抱きしめるといい子に育つ」、「本の読み聞かせは早い方がいい」、
「クラシックで育てると情緒豊かになる」、「母親の育て方の良し悪しが子どもの将来を決定する」
などなど巷でまことしやかに流れている「子育て神話」のほとんどが、
全く根拠がないか、あるいは、あってもそのごく一部を説明するに過ぎない、
ということを、数々の学術論文をもとに実証する内容です。

肉親、特に母親が幼少期の児童に及ぼす影響は大きく、
故に、母親は仕事よりも子育てを優先すべきであるという考え方は、
現在の社会にも根強く残っているような気がします。
確かに、子どもが誕生して一番最初に出会う人間は親であるし、
親を通して社会を知り、成長していくのは事実だと思います。

「氏か育ちか」というのがこの本の大きなテーマなのですが、
遺伝学や心理学の実験や資料を参考にすると、
子どもの人格を決めるのは半分は遺伝子、そして後の半分は環境、しかも、
家庭における親との関係というよりは、
家庭の外にある仲間集団(例えば幼稚園、学校のクラスや近所の遊び仲間)の影響が大きいことを、
様々な例を挙げて説明しています。

確かに、
日本においても昔の、伝統的な生活様式では、
ちょっとエライ人になると、両親ではなく乳母が子育てしますよね。
現在みたいに医療が発達してない時代(そう昔ではない)には、
出産に伴って母親が亡くなるということもよくあったらしいですし、
必ずしも実の両親に育てられた子ばかりではありません。
私自身も小さい頃、親は二人とも忙しかったので、
伯母とか、近所のおばあちゃんに預けられたりしていたし。
11歳歳の離れた妹は、親ではなく私たち姉が、
ミルクをやったりオムツを替えたりして育てました(笑)。
特に性格にも問題なくフツーに育ってますので、
確かに、親と常に一緒にいて、抱きしめてもらわなくても、
フツーに大きくなるということかもしれません。
「親はなくても子は育つ」とはよく言ったもんです。

書いてある中で興味深かったエピソードは、
とある心理学者が、チンパンジーを人間の環境で育てたら人間っぽくなるか、
という実験をするために、「グア」という名のチンパンジーを、
自分の子どもと一緒に自宅で育てることにチャレンジしたというもの。
(昔の心理学者は結構ハゲシイ実験をしていたのですな)
チンパンジーは、言葉こそ話せるようにはならなかったものの、
まるでホンモノの兄弟のように息子と遊んだり、時にはかばい合ったり、
それはそれは仲むつまじかったということです。
しかし、問題はチンパンジーではなく息子の方に起きました。
それは、既に人間の言葉をしゃべっていい年齢の息子が、
なんと「チンパンジー語」を覚えてそれをしゃべるように(うなるように??)なってしまったこと。
人間である両親は当然人間語で(英語で)話かけてるのに、
息子が覚えたのはサルの言葉だったんです。

当然その時点で実験は中止され、グアは動物園に送られましたが、
その後、息子はちゃんと「人間として」成長し、ハーバード大学に入ったそうです。
この実験から言えるのは、
人間はとても模倣が得意であるということ(チンパンジーよりも息子の方が模倣上手だった)、
そして、年齢差のある人間より、
より自分に近い「仲間」の模倣をし、その環境に慣れていくということです。

私も、アメリカでホームステイをしたとき、ホストファミリーは中国系の家族で、
お父さんは中国出身なのでマトモに英語が話せず、祖父母も英語は全くダメ、
というような感じでした。
お母さんは中国系アメリカ人だから英語もできるけど、
お父さんとは中国語で話すことも多かったようです。
でも、子どもたちは英語しか話せず、中国語はほとんどわからない、と言ってました。
子どもたちは、家庭環境より「仲間」の環境に大きな影響を受けるようです。

「家族が愛情を注がないと情緒不安定になる」ということが言われますが、
むしろ、幼児期(4歳頃まで)に、仲間と遊べなかった子どもたちの方がアブナイようです。
仲間とは、きょうだいでもいいんだそうです。
それを考えると、
核家族できょうだいが少なくて、親としか遊ばない最近の子どもが、
コミュニケーション不全になるのもなんとなく説明がつくような気がします。

親、特には母親は、
自分の子どもが道を踏み外したとき、
「自分が愛情を注がなかった」「子どもの頃一緒にいてやらなかった」と自分を責め、
社会も当然のようにそう糾弾しますが、
それは、現代社会が恣意的に作り上げた「神話」だということです。

もちろん、子どもに外の環境を与えるのは親ですから、
そういう意味で親の力は大きいです。
しかし、子どもにとって一番重要なのは、
大人がきっかけを与えてくれた集団の中で、
いかに周りを模倣し、自分の位置を確立していくかということなんですね~
もちろん、10のグループがあれば10の自分があるわけで。
その切り替えのスムーズさも、「集団社会化していく」過程なんです。

あまりにも親や教師が口出しする今の社会はよくないよね、
と改めて思いました。
そういう意味では、ゲームづけ、テレビづけもよくないだろうし。
子どもは元気に、子供同士で遊ばせたほうが理にかなってるんですね(笑)
興味のある方は是非ご一読を~~
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by nasuka99 | 2007-09-09 23:21 | books