人気ブログランキング | 話題のタグを見る

だます心だまされる心

だます心だまされる心_f0007926_17473658.jpg地球上に生まれた種の一つとして人間が生き残っていくために、騙したり、、騙されたりすることは戦略として選択されてきたものであるようです。昆虫の擬態、動物の保護色、カッコウの託卵など、相手を騙して生き延びる、あるいは子孫を残すというのは、いわばどの動物でもやっていること。だから、人間にも、「騙されたい」という願望があるようですよ。

そんな話も交えて、だましだまされる心の謎を論理的に説明してくれるこちらの本。著者は、自ら手品を演じて学生を翻弄する(笑)大学の教授さんです。


だます心だまされる心(新書)
  安斎 育郎 (著) (岩波書店  735円)

手品から疑似科学、オカルト、カルト、そして「振り込め詐欺」まで幅広く俎上に載せています。
特に、妖精(のインチキ写真)を信じたコナン・ドイル、実は黄熱病の病原菌を発見していなかった野口英世など、「科学者も錯誤する」お話はなかなか読み応えあり。騙しのテクニックというのは、人間の脳が陥りやすい「思い込み」をうまく利用しているんですね。

人間の脳は、物事を単純化することが得意だそうです。つまり、手間を省くのです。そのためには、「パターン化する」という作業が一番です。一度パターンを覚えたら、次もそのパターンでコトが起こると思い込んでしまう。そして、一度覚えたパターンからはなかなか離れようとしない。これが、職人技のように経験としておおいに役立つこともあれば、新しいものを取り入れたときに役に立たなくなってしまったり、プラスにもマイナスにも働きます。

そして、全く新しい事態に遭遇したときには、パターンがないので「真っ白」に固まってしまう。だから、避難訓練が必要になるのですよね。実際体験していないことでも、シミュレーションや訓練でパターンを覚えておくのはとても有効なことなのです。

この本の中では、「自分は騙されない」と「思い込んでる」その時点から、もうあなたは騙されているのだ、と書いてあります。高をくくるのはまずいんですね(^_^;)大きな被害を出している「振り込め詐欺」も、まずありえない事態でターゲットのアタマを「真っ白」にして思考回路を奪い、自分の身内がタイヘンなことをやらかしてしまった!という「思い込み」を利用してお金を巻き上げるのです。ヤクザや弁護士、警官などの「登場人物」について、私たちはテレビドラマで「パターン」を覚えさせられています。ドラマ自体が架空のもので、ストーリーがあり得ないにもかかわらず、私たちはあのパターンがホンモノだと思い込んでいるのです。だから、詐欺師たちはテレビの通りに演じればよい。

いかに、普段から批判的な視点を持つこと、そのために「事実」を知っておくことが大切かということが、この本では語られています。色んな例を読んでるだけでも楽しいので、興味があったら是非ご一読ください。

soleilさんのこのエントリ、個人的に本当に腹が立ちましたし、これで受けた心の傷や、また実際に被害にあわれている方が大勢いるかと思うと、いつか絶対反撃してやりたい!!!と思ったりしますよね>振り込め詐欺

こちらのサイトで、実際に犯人からかかってきた電話を聴くことが出来ます。結構フツーっぽいのが意外でした。是非聴いてみて、防災訓練しておいてください。知識は力ですからね~~。
by nasuka99 | 2006-09-27 22:50 | books