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鎮守の森

スピリチュアルブームで、神社仏閣を巡って、
巨木やそれを取り囲む社叢林に癒しを求める人をよく見かけるようになりましたね。
近頃は、森林セラピーなるものも流行ってるようです。
鳥取県は、大都市に比べて緑が多いので(学校の裏に山があったりするし)、
それほど緑に飢えてるわけではないのですが、
それでも、時々鳥の声と葉ずれの音しか聞こえない森に入ると、
やっぱりいいよね~~♪と思います。
自転車でヒルクライムするのも、そんな気分を味わうためだったり(笑)

山の中まで行かなくても、日本には、町のあちこちに森があります。
田んぼの中に突然こんもりと茂った森が現れたり、
河川敷や堤防沿いに鬱蒼とした茂みを見つけたり。
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そんな鎮守の森を目にするたびに、
日本人は、上手に森を守ってきたんだなぁ~、と感動します。
鎮守の森のことがもっと知りたくなって、手に取った本。

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『鎮守の森』 宮脇 昭 著  新潮文庫 380円

なんだか、結構衝撃的でした。

著者は、日本を代表する植物生態学者で、
新日鉄やイオングループなどの植樹活動、
海外の熱帯雨林再生プロジェクトなどの先駆者です。
この著書の中で中心となる主張は、
「ただ、何でもいいから植えるだけではダメ。
その国、地域、土地における”本来”中心となる木を植樹するべきである」
ということです。

人間が経済活動を行う中で、植物や森林は(化石にせよ生きたものにせよ)、
次々と燃料として搾取されています。
その結果、地盤が緩くなったり、貯水率が減ったり、山火事が増えるなど、
思わぬ災害に襲われるどころか、
地球温暖化を促進しているのではないか??という危惧もあり、
木を切り出した後に成長の早く、木材資源にもなる杉や松を植える、
ということが行われてきました。
しかし、その杉や松と言うのは、
本来岩場や、海沿いの尾根などの厳しい環境に限定して生える木らしいです。
また、エコロジー活動のプロパガンダとして植えられる街路樹も、
外国産のハナミズキなどが目立ちますが、
こういう「本来そこには育たない木」というのは、
根付かないし、下草を取るなどの手入れをしてやらないと枯れてしまう。
しかし、その土地に合った木を植えてやると、
その周りに森が育ち、一定の期間が経てば手入れなども必要なくなるとのこと。
例えば、外来種の種が飛んできても、
それを自然に駆除してしまう力があるそうです。

まずはそういう話に目からウロコでしたが、
鎮守の森などの「手入れの要らないふるさとの森」、里山、そしてジャングルは3つとも別物だ、
という話にもへへぇ~~!と感心しました。

極めつけは、ふるさとの森で植物が生きるための掟、
つまり、「最適の環境と最高の環境は違う」というお話です。
競争相手のない、滋養に溢れた満ち足りた空間、
つまり、「最高の環境」では、森は長くは続かない。
植物同士で競争があり、ちょっと厳しい環境が「最適」なんだとか。
これって、人間社会にも言えますよね(^_^;)

200ページにも満たない、すぐに読める本ですが、
コレはなかなかためになりました!
間違ったエコロジーをしてしまう前に、読んでおきたい一冊です。
いやぁ~、日本人ってスゴイな、と再認識させられますよ(笑)
by nasuka99 | 2010-08-29 18:02 | books